地図に載らない国ソマリランド


2024年、明けましておめでとうございます。
また、被災され大変な日々を送るすべての方々に心よりお見舞い申し上げます。

新年早々に、ソマリランドからエチオピアと2国間の基本合意書(MoU)を締結したというニュースが飛び込んできました。

報道によると、内陸国エチオピアは貿易や海軍のためにソマリランドのベルベラ港を拠点にアデン湾アクセスを獲得、ソマリランドはエチオピア航空のシェアと国家承認を獲得、という合意内容です。

独立して33年目にも関わらず、国際社会から承認されないソマリランド。隣国エチオピアから国家承認を受けることは、ソマリランドの発展にとって大きな意味があります。

町の至るところで見かけるソマリランドの国旗

緑=繁栄
白=平和
赤=勝ち取った独立と英雄を象徴する血
黒い星=南部ソマリアとの統一の終わり
+イスラム教信仰の告白シャハーダ

ソマリランドは、国際的にはソマリアの一部となっています。実際は、1991年の独立後、国旗をはじめ、独自の政府、通貨、社会システムが成り立っているのです。

国会は二院制。上院にあたる長老院は各氏族の長老から選出されます。下院にあたる議会の議員や大統領は、普通選挙で選出するシステムです。ソマリランドは、独裁国家から独立して、アフリカの角で独裁政権や紛争に囲まれた中、独自に民主主義を築き、保っているのです。

独立紛争時に首都ハルゲイサを全壊させたソマリア軍のMiG-17戦闘機は、平和記念碑としてハルゲイサの中心部に掲げてあり、ソマリランドが勝ち取った独立と再建の誇りを感じます。未承認国家のため、世界銀行やIMF、外国の力を借りることができず、自国の力だけでここまで再建したこと、そして民主主義で治安も良い国を保っていることは、奇跡とも思えます。

独立紛争で全人口が流出したハルゲイサ。独立直後2万人だった人口は、33年経ったいま何と120万人!夜でも活気にあふれています。

2023年12月、ソマリランド訪問の機会をいただきました。現地で、ソマリランド発展の鍵は圧倒的な氏族社会とディアスポラ(移民)の存在ではないかと感じました。海外で知見を得たディアスポラがソマリランドに持ってくる経験とお金、そして非常に絆の強い氏族社会でそれが共有されること。ソマリランド発展は、ソマリ人のあたたかく強い絆があるからこそと言えます。

とは言っても、最大の課題は、これといった産業がなくこの先の発展に限りがあること。突破口は、何と言っても国際社会による国家承認です。エチオピアの国家承認はそれに向けた一筋の希望の光ですが、それを良く思わないソマリアを中心に、現在アフリカの角、中東諸国の緊張感が高まっているという報道も。何とか対話をベースにした平和的な解決につながるよう祈っています。

そして、もうひとつ現地で強く感じたこと。私たちは、フランキンセンスとミルラ樹脂のフェアトレード直接調達を通して、そして精油や蒸留水を使用することで、採取者の生活向上につながっています。とても小さな一部ですが、ソマリランドという奇跡のような国の持続可能な発展につながっていることを、心から嬉しく思います。


下記はおまけ。ソマリランド小話です。

どのマーケットでも目にする紙に印字された数字。スマホからデジタル通貨を送金するシステム「Zaad」が一般的で、現金を持ち歩く人はいません。人情味のある情景で、近代的な取引のギャップが新鮮です。

このシステム、口座開設の必要はないオンラインアカウント。世界のどこからでも送金1秒後に、運営するTelesom社の店舗に行き名前と電話番号を伝えるだけで、現金引き出しも可能です。これも、氏族社会の強い信頼がベースにあるからこそ成り立つのかもしれませんね!

ソマリランドは、日本車だらけ!日本ではニーズがなくなった何十年も前の普通車やバスであふれてました。圧倒的人気はトヨタ、続いてニッサンです。

ソマリランドの一般的なご飯は、遊牧民文化ならではのがっつり肉食。スパイスご飯とパスタに、柔らかく煮込んだラム肉やヤギ肉、ジャガイモやキャベツなどと合わせていただきます。

写真は、現地で樹脂調達のコーディネートをしてくれているアリ。

そして!近年始まったばかりの漁業。新しい産業のため、漁具、漁業や調理方法の知識、魚の名前はまだ少なく、赤身は全て「マグロ」と呼ばれているとか。

街を出るとすぐに広がるアフリカの大地。ラクダや顔が黒いヒツジさんが出迎えてくれました。

100%ソマリ文化が保たれゆったりした時間が流れるソマリランド。氏族の伝統も含めローカル文化を大切に、環境にも人にも動物にもやさしい世界のエシカルな事業モデルを取り入れた持続可能な産業発展ができれば、さらに本当の意味での奇跡の国。そんな未来を一緒に描けたら、素敵ですね。